非定常作業の安全確保




非定常作業事故の発生パターン

製造業における労働災害統計をみると、最も多いのが、はさまれ・巻き込まれによるもので全体の約三分の一を占めています。

そして、そのほとんどが、定常作業時ではなく、清掃、修理、メンテナンスなどの非定常作業時に発生していることはご存知ですね。

その発生パターンとしては、次のようなケースがあります。

   装置を駆動したまま作業して被災する。
     ロールを回転させたままウエスで拭いている際に巻き込まれた。
     低速で回転している回転機の内部の清掃のため手を入れてはさまれた。
      (高速より低速の回転機において多い)

   停止中の装置が動き出して被災する。
     ごみの付着に気付き稼動範囲に立ち入ったところ、シーケンスタイマーにより停止していたロボットが
      動き出してはさまれた。
     搬送装置上での荷崩れに気付き、対応しようと立ち入ったことにより、搬送荷の検知センサーが検知し
      自動機が起動してはさまれた。

   第三者が起動させて被災する。
     スイッチを切り、装置内でメンテナンスしていたところ、別の作業者が気付かずにスイッチを入れ、装置が
      駆動してはさまれた。

   装置内に残留していたエネルギーにより被災する。
     電源を切り自動プレスのメンテナンス中、上部に位置していた金型が重力で落下してはさまれた。
     電源を切りメンテナンスしていた装置のストッパーをはずしたところ、エアーシリンダー内に圧縮空気が
      残っていたため、アームが動き出しはさまれた。




典型的な重大災害事例

典型的な重大災害事例を次に紹介します。

ある被災者は共同作業者と二人で撹拌装置付の反応釜の内部で点検作業を行っていた。

その装置は3階にあり、その制御盤は1階の操作室にあった。

共同作業者は点検作業が完了したため、1階の制御盤で撹拌装置を起動した。

しかし、その際に被災者が撹拌装置の内部に入っていた。内部に置き忘れた工具を取りに反応釜内に入っていたのである。

被災者は撹拌装置の羽に巻き込まれて死亡した。
 




非定常作業事故対策の日米の比較

このような非定常作業における事故は洋の東西を問わず非常に多く、日本においても米国においても法律により対策を要求しています。

日本

非定常時の事故を防ぐために、労働安全衛生法では労働安全衛生規則第107条において次のとおり定めています。

  1. 機械装置の運転を停止すること。
  2. 当該装置の起動装置に鍵をかけること。
  3. 第三者が当該装置を運転することを防止するため、起動装置に表示板を取り付けること。
    または監視人を配置すること。

しかし、現実には、装置を停止しないことにより被災する事故が後を断たず、また、第三者が誤って装置を起動して被災する事故も発生しています。

第三者による起動装置の誤投入対策としては、キースイッチを多く使用されています。つまり、自動車のキーのように装置を停止した後にキーを抜いて、それを携帯するというものです。これにより第三者による誤起動の恐れが回避できます。

しかし、前述の災害事例のような複数人による作業の場合は、作業者間の確認不足により機能しないことも懸念されます。


米国

米国ではOSHA(米国連邦労働安全衛生局)が非定常作業をサービス&メンテナンスと定義付け、サービス&メンテナンス時の事故を防止するために、事業者に対し、ロックアウトシステムの導入を義務付けています。

ロックアウトシステムは、OSHAA基準によって義務付けられた極めて安全性の高い管理システムです。

1989年に法制化されたこのシステムでは、エネルギー源を切った際に必ず作業者自身一人ひとりが南京錠でスイッチ類をロックし、誤って第三者が投入できないように鍵をかけることを義務づけました。

米国ではこれにより、年間6万件の事故及び120名以上の死者を未然に防いでいるといわれています。




ロックアウトシステムの解説

【ロックアウトシステムの目的】

ロックアウトとは、The Control of hazardous energy つまり、危険エネルギーのコントロールの手法である。

鍵や表示札を用いて装置からの不要なエネルギーの放出を防止する。

ロックアウトシステムの目的は、次の状況を防止することで、

   不要な再エネルギー化 unexpected re-energizing
   不要なスタートアップ unexpected startup
   不要なエネルギーの放出 unexpected release of stored energy

なお、ロックアウトシステムの対象には構内の外注業者、来客など従業員以外を含む。


【管理プログラム】

システムの導入時には次の内容を含むロックアウトプログラムを作成することが必要である。

   目的と対象範囲
   責任と権限
   リスクアセスメント
   手順書の開発
   トレーニング
   監査




ロックアウトシステムの導入

ロックアウトシステムの導入には、プログラムの作成をスタートとして下図のフローチャートに示すステップが必要である。以下にそのステップを示す。



  


【リスクアセスメントとロックアウト方法の決定】

ロックアウトプログラムに関するリスクアセスメントとして次の点を明確にすることが必要である。

   エネルギー源の特定

   1. 当該装置の全エネルギー源(電気のみならず油圧、空気圧、バネなどの機械エネルギー、重力エネル
     ギー、化学薬品の配管などを含む)を特定すること

       顕在エネルギー
        ・機械  ・電気  ・化学  ・熱  ・水圧  ・油圧  ・空気圧 ・放射性

       潜在エネルギー
        ・スプリング  ・圧力下のピストン  ・重力

   2. 個々のエネルギー源に対してエネルギー遮断のための次の事項を明確にすること

       遮断方法(どのスイッチを切るか、バルブを閉めるかなど)
       遮断されたことの確認の方法(スイッチを押してみる、バルブを開いてみるなど)


   非定常作業とその危険源の特定

   1. 当該装置について、どのようなサービス&メンテナンス作業が存在するかを明確にする。

       清掃作業、点検作業、歯の交換作業など

   2. 当該非定常作業において前項で特定したどの危険源が管理の対象となるかを明確にする。


   ロックアウト方法の決定

   リスクアセスメントにより明確にした、対象となる業務およびそのリスクを手順として整理する。その事例を
   次に示す。この手順書は作業場の装置付近に掲示することも有効である。


【手順の開発】

ロックアウトシステムの導入後、実際のサービス&メンテナンス時には次のような手順により作業される。

  1. 停止

    装置のオペレーターに対し、装置をロックアウトすることを知らせる。
    通常のとおり装置を停止する。
    エネルギーを非活性化する分離デバイスを装置に付ける。
    装置を適切なロックアウトデバイスによりロックアウトし、タグアウトする。(方法は別手順)
    ばね、蒸気、水圧、空気圧などの蓄積エネルギーを放出する。
    通常の方法により装置の起動を試みる。起動しなければロックアウトは完了である。

  2. サービス&メンテナンス作業の実施

  3. 復帰

    治具・工具が片付けられていることを確認する。
    そのエリアの全従業員に再エネルギー化(再起動)することを知らせる。
    装置の制御系がニュートラルであることを確認する。
    ロックアウト/タグアウトデバイスを取り去る。
    再エネルギー化する。
    オペレーターにサービス&メンテナンスが完了したことを知らせる。

  4. 運転を開始する。


【トレーニング】

ロックアウトプログラムの実施に際しては従事者および関連する作業者へのトレーニングが必要となる。

ロックアウトまたはタグアウトは、保守点検またはメンテナンスを行う許可された従業員によってのみ行うものとする。つまり、トレーニングを受けて、鍵を付与された従業員のみが遂行することができる。

トレーニングの内容は次のとおりである。

   危険エネルギー源の認識
   エネルギーコントロール手順の目的と使用
   各装置に対するロックアウト手順
   手順を適用しない場合の結果(事故、危険源など)


  南京錠の付与

   トレーニングを受けた従業員に対しては、南京錠を付与する。この南京錠には個人認識用の識別を施す。
   また、鍵は1個のみが与えられ、予備の鍵は処分される。もちろん、すべての南京錠は異なる鍵でのみ開錠
   できるシリアル番号の異なるものとする。

  再訓練

   再訓練は、必要に応じて、職務の変更、新しい危険のある機械、設備、プロセスの変更、エネルギーコントロ
   ール手順の変更があるときに実施しなければならない。


【監査】

事業者は、少なくても年1回、定期的にロックアウトプログラムに従って、危険エネルギーコントロール手順(錠とタグ)が適切に実施され続けていること、従業員がそれらの手順の下での責任を熟知していることを確かめるために、実施されていることを確認することが要求される。

この監査によりロックアウトプログラムの運用が徹底される。



監査チェックリストの事例
                                         
>>>PDFファイルのダウンロードはこちら
項 目
現場
サービス・メンテナンス作業がロックアウト手順に従っているか
ロックアウトデバイスは良好に保管されているか
各装置のロックアウト手順の掲示は良好か
新設装置に対して表示、掲示は適切か
オペレーターへのインタビュー
ロックアウト手順を理解しているか
ロックアウトトレーニングを受講しているか
ロックアウトデバイスを保有しているか
ロックアウト手順に不満はないか
管理
ロックアウト手順の見直しはしているか
新設設備に対してロックアウト手順を開発しているか
開発したロックアウト手順は適切か
新入社員に対してロックアウトトレーニングを実施したか
年次のロックアウトトレーニングを実施したか
ロックアウトの運用状況を確認しているか
運用不良の際の是正対策を講じているか




このような素晴らしいシステムをOSHMSの管理策として採り入れてみてはいかがでしょうか。





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